兵庫県が誇る酒蔵「剣菱酒造」の500年の失敗と教訓

      2017/12/03

こんばんは。光と海と風を感じる海辺の小さな宿まる屋若大将、藤原啓太です。

土曜日の城崎温泉、本当に多くの人で賑わっていました!小さなお子様を連れたご家族も友達同士のグループもみんな楽しそうに温泉街を歩かれていました。やっぱり、但馬が誇る観光地ですね^^

 

 

この日にお会いした養父市銀海酒造の蔵元、安木さんにお誘い頂き、先日、兵庫県が誇る酒蔵「剣菱酒造」の社長、白樫(しらかし)政孝さんの講演を聞きに行きました。「剣菱酒造」は、500年以上続く伝統的な酒蔵で、そのロゴマークは浮世絵にも描かれているほど。講演のテーマは「500年の失敗と教訓から学ぶ経営理念」という中々衝撃的なテーマ。会場となる養父市商工会本所へ向かいました。

 

剣菱酒造の失敗の歴史

 

「500年間で剣菱酒造のオーナーは4回変わっています」

講演は、剣菱酒造の失敗の歴史から始まりました。500年という長い年月の間、酒蔵にとっていい時代ばかりではなく、失敗、復活を繰り返して今日まで歴史が続いていると白樫さんは言います。白樫さんの曽祖父が剣菱酒造の社長になられてから90年余り、剣菱酒造ではある言葉を心に刻み、酒造りをされていました。

  1. 止まった時計でいなさい。
  2. 酒造りの費用を惜しまず、使いなさい。
  3. 少し高価な酒を上限とし、酒を造りなさい。

1.の言葉は流行に飛びつくな、ということ。流行っているからといって飛びついてもその時はすでに遅く、後出しでは時代遅れになってしまう。それよりもずっと同じ品質を保つことが大事という意味です。

2.と3.は少し矛盾を感じます。酒造りに費用をかければかける程、出来上がったお酒は高価になります。ですが、そこのバランスを考えて、お酒を通じて人々に楽しみを与えることを一番に考えなさいということです。剣菱酒造の日本酒には特定名称酒の記載がありません。分類としては普通酒に分けられます。特定名称酒を名乗るためには、三等級以上のお米と規定通りの精米歩合などを満たさなければなりませんが、剣菱酒造では、その年にできたお米の状態によって精米歩合を変えて酒造りを行っています。特定名称酒という枠にとらわれず、ひたすらに「剣菱酒造の酒」を追求されているのです。

 

 

伝統的な酒造りにこだわる

 

剣菱酒造は昔から、変わらない酒の味を守り続けてきました。農家さんが丹精込めて作られたお米を伝統的な道具、麹蓋(こうじぶた)や甑(こしき)などを用いて酒造りを行っています。剣菱酒造の味を造り出すためには様々な道具が必要となります。伝統的な酒造りを続けるからこそ、新しい取り組みが必要となると白樫さんは言います。

今年に入り、新しく始められた3つの事業。1つは、農業法人を設立されたことです。酒の原料であるお米を作られている農家さんは、高齢化が進んでいます。田んぼを手放すという事態も多くあるそうです。その土地で続けられた米作りが、絶えることなく続けていける仕組みを作られました。

2つめは、酒造りに必要な伝統的な道具を作ること。麹蓋や甑など木製の道具を作られる職人が、農家さんと同じように高齢化が進み、技術を伝承することが難しくなっているそうです。そこで、数少ない職人を社員として受け入れ、伝統技術を若い世代に伝えることで酒造りに必要な道具を後世に残そうということに力を注がれています。

3つめは、2つめと似ています。お祝いごとや神社などに納められる樽酒のわら縄職人を育成、縄作りの技術を絶やさないように作り続けられる環境の維持に取り組まれています。これら3つの事業は、10年以上も前から取り組まれ、最近になりようやく少しずつカタチになってきたばかりだとおっしゃられていました。

全ては、剣菱酒造の酒の味を守るため。この先もずっと剣菱酒造が継続していくため。伝統を守るためには、新しいことをしなければならない。白樫さんは、そのように語られました。

 

「海の上の船が同じ位置にとどまること」

 

講演を聞いて、僕が一番心に残った言葉です。海の上の船は、何もしなければ潮に流されてしまいます。同じ位置にとどまるためには、潮の流れ、風の吹く向きを読み、絶えずこぎ続けなければならない。剣菱酒造が行われていることは、まさにその通りだと感じました。

自分自身の立場に置き換えてみると、どんなことが考えられるでしょうか。但馬の自然に囲まれ、豊富な食材に恵まれ、豊かな自然の恩恵を受けながら日々過ごしています。それを当たり前だと思わず、10年後、20年後と続いていくためには何が必要かを考えることは、とても大事なことだと感じました。海の上の船が同じ位置にとどまるために必要なことを、時間をかけながら、しかし確実にしっかりと行動していきたいと思います。


 - 但馬(たじま)のこと

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