但馬漁協が販売している「麹の魚醤」が伝えてくれること
こんにちは。光と海と風を感じる海辺の小さな宿まる屋若大将、藤原啓太です。
先日、香美町小代「山の駅SHAKUNAGE」にて勉強会がありました。”魚醤”を使った料理の勉強会です。
かにの魚醤を使った柴山がにのひろうずです。どうぞ〜(꜆ ˙-˙ )꜆#小代で魚醤三昧 pic.twitter.com/MKM9e2hiIy
— 藤原啓太 但馬の魅力を伝えたい まる屋若大将 (@keita_maruya) 2019年3月24日
但馬漁業協同組合が2016年より販売されている「麹の魚醤」(発売開始時は但馬魚醤という商品名でした。発売当時の記事はコチラ)は、養父市の大徳醤油が製造。醤油もろみの中にハタハタや紅ズワイガニ、ノドグロといった魚介類を原料として加え、発酵・熟成させています。原材料に添加物などは使わずに国産原料のみを使用した素晴らしい調味料です。
ですが、この商品はちょっとわかりにくい商品です。
そもそも魚醤じゃない!?
「魚醤」ってそもそも何?と思い、ウィキペディア先生に聞いてみると、
魚を塩と共に漬け込み、自己消化、好気性細菌の働きで発酵させたものから出た液体成分
とありました。そうです。「麹の魚醤」は厳密には魚醤ではありません!!醤油もろみに魚介を加えて製造しています。秋田県の”しょっつる”や石川県の”いしる”といった本来の魚醤に見られる独特の風味はあまり感じられず、魚醤特有の風味を好まれる方にとっては少し物足らないような気がします。かといって、魚醤を好まれない方にとっては風味は感じられずとも「魚醤」という名前がついているだけでちょっと手を出しにくい商品になっている気がします。
そしてもう一つ。現在の「麹の魚醤」のラインナップは、紅ズワイガニ(香住ガニ)、ノドグロ、ハタハタ、エビ、ドギ(=ノロゲンゲ。香住での呼び名)、タコ、ホタルイカの7種類。それぞれの魚介を使用して熟成させていますが、味や風味がその魚介の特徴を表しているかというとそれも難しいところ^^;確かに、普通の醤油とは違う香りや味わいですが、その味が使っている魚介を連想させるものかというと・・・、ハッキリしないのが正直な所です。味はもちろん美味しいんですが^^;
「麹の魚醤」の意味
「麹の魚醤」は伝統的な醤油の製法に魚介を加えて作られたものです。原材料は国産のもので添加物は使っていない素晴らしい調味料です。先ほど本来の魚醤らしさがないと言いましたが、言い換えればクセがないのでどんな料理でも使えるということです。卵焼きにちょっと入れて、納豆にちょっとかけて。そんな使い方もいいと思います。
僕は「麹の魚醤」を使う意味は、美味しい料理を作る他に、こんな意味があると思っています。
例えばノドグロの魚醤。高級魚のイメージがあるノドグロ、もちろんサイズが大きくて立派なものは高額な値段で取り引きをされます。しかし、一度の漁で同じ網に入って水揚げされる小さなノドグロはどうでしょうか。当然安価で取り引きされます。同じように紅ズワイガニやハタハタもそうです。どれも漁師さんが懸命に漁をされて水揚げされた海産物なのに。。。
そこで安価な値段で取り引きされてしまう海産物をどうにかして有効に使うことはできないか、新しい価値を作ることはできないか、と考えられ「麹の魚醤」は誕生しました。今まで安価で取り引きされていた魚介を漁協が適正価格で買い取り、調味料として販売することで魚価を安定させること。これは、巡り巡って海に出て懸命に海産物を獲ってこられる漁師さんの労働環境の向上につながり、第一次産業の漁業を支えることになるのです。
「麹の魚醤」を食卓で使ったり、誰かにお土産として渡したりするときに漁業の現状について触れられ、このような物語を伝えることができます。これは、他のどんな調味料にもできないことです。「麹の魚醤」にしかできないことです。全ての方には理解して頂けないかもしれません。ですが、但馬漁協でこのような取り組みがあり、このような商品があること、少しの方だけにでも伝えて頂ければ「麹の魚醤」は活きてくると思います。
現在、但馬北部の各お土産店では「麹の魚醤」をベースにした佃煮や干物、味付け海苔などが販売されています。まる屋でも味付け海苔を販売しています。
美味しいだけでなく、家族や友人との会話の中で但馬への旅行話と一緒に「この調味料はね・・・」と、伝えて頂くことができる。そんなところに「麹の魚醤」の本当の意味があると思っています。